コロナで変わった学会事情

医師が属する学会は数多く存在します。例えば私の場合は内科医で専門が循環器ですので内科学会と循環器学会に属していますが所属数は少ない方です。多い場合は更に複数の学会に属している医師も少なくありません。しかし学会が増えれば増える程悩みの種も増えてきます。お金さえ払えば学会に入会するのは簡単なのですが、専門医など保持する場合はその更新のためにその学会に出席して最新の医学知識を学び単位を取らなければなりません。その単位が取れなければ自動的に専門医の資格も消失します。別に専門医がなくても医者はできますので「そんなの関係ねえ」という強者もいますが、普通の小心者の医師はぶつくさ文句を言いながらも学会に出席して単位をとり5年に1度の専門医資格の更新をしているのが現状です。一般的に5年のうち2回は年1回の全国学会に出席して、更に年に1回程度は地方学会に出席すれば単位取得ができます。しかし全国学会はほとんど東京を中心とした大都市で順番に回していますので5年のうちに1回でも博多に全国学会が来ればラッキーです。地方会は広島市や岡山市など県庁所在地が多く新幹線の停車駅でもありますのでどうにかなります。しかし新幹線がない出雲に在住していた頃は広島に出るのも一仕事でした。一方で勤務医の頃は日々の仕事が忙しく当時はポケベルを持って日夜目に見えない鎖に繋がれていましたので、学会は唯一ポケベルから解放される息抜きの時間でもありました。更に自分の住んでいる町とは異なる町に小旅行をしてその地元の美味しい食べ物や地酒を飲み、大学時代の旧友や現在の同僚とポケベルを気にせずに羽目を外すことのできる唯一の心休まる時間でもあったわけです。

ところが新型コロナが流行すると学会は中止され、その後は開催されてもリモートに変わり当地に行くことは皆無となりました。リモートの利点は全国津々浦々どこにでも画面上で参加できますので専門医の単位取得は各段に楽になりました。毎日の診察しながら仕事中でもネットで学会にアクセスさえしておけば仕事の合間に聴講でき同時に単位も取れます。そして何よりも大きなメリットは交通費や宿泊費がかからないことです。通常1泊2日で上京すれば10万円近くはかかります。しかしネットなら2万円から3万円の参加費のみで済んでしまいます。道理で新型コロナが流行ったら旅行観光業界に大ダメージを与えたというのも頷けます。年数回の学会に参加すれば30万円くらいは軽く吹っ飛んでしまいますので、金銭的には得になります。一方で地元の目に見えない鎖を切ることはできなくなりリラクゼーションタイムはなくなります。現在はスマホで世界中とすぐに繋がることができますが、一方でいつも呼び出し音という鎖に繋がれているのも事実です。昔電話の横で一晩中待機していた時と同じなのです。その緊張感を一瞬でも開放することが学会参加の出張でもあったわけです。お金をとるか?時間をとるか?はたまたリラクゼーションをとるか?は個人によって意見は異なりますが、私個人としてはリラクゼーションを取りたいと思います。しかし新型コロナが終息してももう元に戻ることはないでしょう。

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