「動的平衡」(背表紙にサッカーの岡田元監督絶賛につられて購入)を読んで

動的平衡・生物と無生物のあいだの2作を立て続けに読みました。以前から読みたいと思って購入していたのですが、なかなか読めずにいましたが、やっと時間がとれましたので一気に読みました。どちらもすばらしい作品でしたが、この作者の福岡伸一先生の素晴らしい点は研究者としての業績は勿論ですが、その内容を素人でもわかるようにそれも専門的なことを一般的な事象にして語ってくださることだと思います。

生物と無生物のあいだでは、医学的な知識が必須のDNAやRNAのことを全然知らない文系の読者でも理解できることです。しかし個人的には動的平衡の方が感銘を受けました。その中で例えば、若い頃の1年と年をとってからの1年は同じ1年でもかなり感じ方が違うという内容でした。それを人体の細胞時計の観念から年をとった方が細胞の時間的周期が遅くなるため、同じ1年の時間経過を速く感じてしまい、若者の1年は細胞の時間的周期が速いため相対的に遅く感じてしまうとのこと。それが真の答えかどうかは定かではありませんでしたが、自分の中では納得です。

もう一つはダイエットについてです。このテーマは、自分の仕事の中にもメタボの改善があり、「ダイエットするには運動するより食べないこと」が究極のダイエットだと極論してきた自分にとって福岡先生のお話は自分の理論がまちがってないことに確信を持ちました。詳細は省きますが、現代の飽食の時代では困難でしょうが、人間が生きるのに必要な最低限のエネルギーさえ取れば決して太らないということです。つまり戦前、戦後の貧困時代に栄養失調と向き合いながら生きてこられた人々が、現代の超高齢化社会の主役になっているのです。

患者さんに「どうすればダイエットできますか?」とよく質問されます。そのとき私は「30万円もって、アフリカに行って、ボランティア活動に参加してください。そうすれば半年後にはスリムになって帰国できますよ。それと日本という国が非常に物にあふれた豊かな国である一方、どれだけ食べ物を粗末にしている国かが実感できますよ」と答えるようにしています。個人的にはアフリカにボランティア活動として実際に行ったことがないので実感が湧きませんが、多分間違いないのではないかと思っています。テレビ番組でグルメ紀行なる特集をよく見かけますが、食べ物を粗末にしないという内容の特集も組んでいただき、そのような教育が資源の少ない日本にとり是非必要ではないかと思います。また物が豊かな国と心豊かな国はどちらが本当に幸せなのでしょうか。

今回、福岡先生の本を読み、科学的に生きているという意味を異なった側面から考え直させていただきましたが、ある意味とても哲学的な内容でもあり、自分にとってとてもためになる時間をいただきました。…と書いていましたら去年の12月に動的平衡2が書店に並んでいましたので、早速買いました。そして今度はいつ一気に読もうかと考えているところです。

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