白衣高血圧と仮面高血圧

健診ではいつもドキドキして血圧が高くなり高血圧と診断されて精密検査に回されるという患者さんがよくいらっしゃいます。これを白衣高血圧といいます。また逆もあるわけです。つまり健診ではいつも正常といわれているのに自宅で測定すると高い場合もあるわけです。これをいつも人前では仮面をかぶったように真の姿をみせないが、自宅で仮面を脱ぐと実は高血圧だったという意味だと思うのですが、仮面高血圧というわけです。

どちらも家庭での血圧を自分で測定しなければわかりません。それでも不明ならば24時間ホルター血圧計といって腕に巻いて24時間測定します。お風呂には入れませんが、その他はほとんど日常生活をそのまましていただきます。ただし腕に血圧の布性のカフを巻きっぱなしなので汗をかきやすい夏場にはつらいものがあります。また冬場は寒くてたくさん服を重ね着しますので腕がモコモコになって検査しづらいという側面もあります。ですから当院でも家庭での血圧計をチェックしてもはっきりと高血圧がわからない患者さんに実施していますが、何せ一晩中巻きっぱなしで30分ごとに腕が加圧されますので緊張して眠れなくて通常より更に高くなり検査した意味がない場合も若干ですがあります。

白衣高血圧は簡単にいえばあがり症です。もちろん正常血圧の方と比べれば将来高血圧になりやすいといわれていますが、「もうちょっと薬をのまないで経過をみましょうか」と申し上げることが多いです。仮面高血圧は白衣高血圧よりも少ないのですが、高血圧による臓器の障害つまり心臓や腎臓や脳などの臓器に圧力がかかり過ぎて病気をきたしやすいといわれていまして、積極的に治療をしなければなりません。いずれにせよ、自宅でマイ血圧計により診断がつきますので、自宅での血圧測定を面倒くさがらずにしていただけなければなりません。

さてそれではこのような白衣高血圧や仮面高血圧を含めて高血圧と診断されたらどうすればよいのでしょうか?という質問をよく受けます。勿論、「薬をのめばいいですよ」というだけでは芸がありません。まず当院では血圧が上がる理由を考えます。例えば塩分とりすぎなのか老化によるものか、または別の理由がみつかることもあります。それから塩分とりすぎでもそうでない患者さんもまずは自宅で血圧測定です。そしてその間に塩分制限のお話を管理栄養士にしてもらいます。その間約1-2か月。勿論それまで待てない猶予のない高血圧の患者さんには薬を処方しますが、通常は待ちます。なぜならば患者さん本人が自分の体の状態をしっかりと把握しなければ食事療法だろうが薬物療法だろうが長続きしないからです。また薬をのんで下がったら治癒したと勘違いして自己中止してしまう人も多いからです。それでは10年20年先の脳卒中や心筋梗塞などを予防できません。三つ子の魂百までではありませんが、最初の導入時の教育がとても大切なのです。なかなかお互いに根気がいりますが、そこをクリアできて自分の病状をしっかり理解していただいた患者さんは当院では末永く良好な関係が築けています。

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