「はだしのゲン」の閲覧制限に想う

巷で「はだしのゲン」の閲覧制限について議論がされています。この「はだしのゲン」には個人的に強い思い入れがあります。自分が小学生の頃、週刊少年ジャンプで読んでいましたが、当時はトイレット博士やガキデカ(こまわりくん)などのギャグや他の週刊誌では巨人の星やドカベンなどのスポ根もの(今知りましたが、すぽこんで文字変換できませんでした)が流行りでした。その中では異色な色彩を放っていましたが、それでも当時の小学生として違和感なく読んでいました。勿論、今回問題となった「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」という事実はその当時もあったかもしれませんが、それ以上に戦争を知らない世代が日本の過去の戦争と平和を考えるにはもってこいの教材だったと今でも信じていますが、当時は10歳そこそこでしたからそこまで真剣には考えてはいませんでした。しかし10歳の私が現実的な戦争と原子爆弾の歴史事実を体系的に知ったのはこの「はだしのゲン」が最初だったのは間違いありません。

次にこの「はだしのゲン」を自分の記憶の中で確かなものにしたのは、以前も少しふれたと思いますが、この春に中学校長を退職された先生で当時は大学卒業2年目の新米教師だった恩師でした。当時の我が1年3組と4組の合同文化祭企画でこの「はだしのゲン」の劇をしたことです。私は裏方で主役のゲンは先日もプチ同窓会で飲みました私の友人でした。脚本は当時の恩師が徹夜で書かれ、多分準備期間が1週間くらいだったかと思いますが、放課後残って皆必死でやった記憶が遠くにあります。その当時も13歳の自分にとって「戦争とは?」と真面目に考えるほどの余裕はなかったと思います。それから35年の歳月が経過して昨年以来の同窓会や恩師の送別会で必ずその話題が出てきます。ただ昔と違うことはその「はだしのゲン」を懐かしみながらもそれぞれの35年があるわけです。戦争について友人とも先生ともマジに語ったことはありませんし、この先も同窓会の飲み会でマジに戦争の話題なんて出るはずもありません。しかし今回のようなセンセーショナルな話題が出ると違和感を覚えるのは私だけでしょうか?

この「はだしのゲン」の図書館での閲覧制限については議論が必要です。一部でも反対意見があれば耳をかさなければいけません。それが民主主義だからです。表現の自由という御旗を掲げて自分の主張だけを曲げずに通すことは好ましくないと思います。必ず表と裏があるように相手もあることですから相手の主義主張をしっかりと聞いて全員一致とはいかずとも、今流行の過半数もしくは三分の二以上の世論の支持に従って結論を出してほしいと思います。そして最終的には行政がその取扱いを決めなければなりません。30年以上も前に真っ白な気持ちで原著を読みそして劇をした私からすれば「はだしのゲン」の描写や史実に対する閲覧制限と戦争と平和という大きな意味で論点がずれたとしても、それを理解した上で世界の多くの国々で翻訳され戦争がいかに人間の愚かな行為で原爆がどんなに悲惨だったかを語り続けていかなければならないものだと個人的には思います。

毎日新聞8.16配信より

松江市では昨年8月、市民の一部から「間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に出された。同12月、不採択とされたが市教委が内容を改めて確認。「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めた。

現在、市内の小中学校49校のうち39校がゲン全10巻を保有しているが全て閉架措置が取られている。古川康徳・副教育長は「平和教育として非常に重要な教材。教員の指導で読んだり授業で使うのは問題ないが、過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切と判断した」と話す。

「ゲン」を研究する京都精華大マンガ学部の吉村和真教授の話 作品が海外から注目されている中で市教委の判断は逆行している。ゲンは図書館や学校で初めて手にした人が多い。機会が失われる影響を考えてほしい。代わりにどんな方法で戦争や原爆の記憶を継承していくというのか。

教育評論家の尾木直樹さんの話 ネット社会の子供たちはもっと多くの過激な情報に触れており、市教委の判断は時代錯誤。「過激なシーン」の影響を心配するなら、作品とは関係なく、情報を読み解く能力を教えるべきだ。ゲンは世界に発信され、戦争や平和、原爆について考えさせる作品として、残虐な場面も含め国際的な評価が定着している。

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「はだしのゲン」の閲覧制限に想う への2件のフィードバック

  1. Kより のコメント:

    しいちょんへ

    こんばんは。お疲れさまです‼

    先日の「恩師退職お祝い会」の席でも中学当時の劇、
    『はだしのゲン』の話題で盛り上がりました。
    恩師から当時のご苦労話や、それぞれの思い出話などなど..。

    私もこの『はだしのゲン』に関しては、しいちょんと同感ですね!
    戦争の悲惨さはこれからも風化することなく、語り続けていかなければ
    と思います。

    K.Kより

  2. 椎木 のコメント:

    K君へ
    コメントありがとうございます。最近、閲覧制限を撤回したとニュースがありましたが、それは閲覧制限の手続きの不備で撤回を撤回したという感じでした。歴史的事実や現在の歴史問題の学校での取り上げ方などは今まで通りたまむし色です。日本が国家として早くしっかりとした歴史認識を示さなければ今後も同様なことがおきるのではと危惧しています。余談ですが、今でもあのときの若いK君のゲンは私の脳裏に残ってますよ!椎木

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