インフルエンザ予防接種と肺炎球菌予防接種

この10月からインフルエンザ予防接種と肺炎球菌予防接種が解禁になりました。インフルエンザ予防接種は毎年この時期の医療機関での風物詩になっています。さすがに10月初旬に接種してくれと言われたら「まだ早いから11月にしたら」と答えてきましたが、今年は少し雲行きが異なります。その理由は今年から肺炎球菌予防接種が初めて一部公費負担で可能となったからです。インフルエンザはその年の流行を予測して作られるため毎年接種しなければなりません。しかし肺炎球菌ワクチンはあらかじめ複数種類の既に肺炎を起こしやすい細菌を対象に作っていますので、一度予防接種をしたらおよそ5年間は接種の必要がないのです。そしてテレビでも新聞でも大きな四角い西田敏行さんの顔がでんと登場して「接種しましょう」と呼びかけるものですからかなりのインパクトがあり10月から予約がかなり入っています。ドクターXで悪代官張りの帝都大学医学部教授をしていた西田さんと比べるととても朗らかな顔をされています。

そこで今回の肺炎球菌ワクチンですが、肺炎は高齢者に多い病気で現在でも高齢者の死因の上位を占めています。それではどういうケースで肺炎になりやすいかというと冬場のインフルエンザに罹患してその合併症として起こしやすいのです。というとはインフルエンザと肺炎球菌はセットで接種して効果を発揮するということです。夏でも肺炎になる人はいますが、肺炎になる確率は冬場の方が圧倒的に増えるわけです。そのため今回はインフルエンザ予防接種であろうが肺炎球菌予防接種であろうがどちらでも接種希望の人は接種するタイミングも考えて早めに接種を開始した次第です。ただ一つだけ困ったことがあります。それは肺炎球菌予防接種の対象者は65歳以上全員ではありません。今年度の接種対象者は65歳、70歳、75歳、80歳、85歳というようにきりのいい年齢の方のみしか公費補助を受けることができないのです。それは一度に全員対象になるとワクチン不足や医療機関での混乱が予想されるからです。しかし言い換えると対象者以外は来年度以後にきりのいい年齢に到達するまで最長で4年間元気に肺炎にならないように頑張って生きなければ公費補助対象者にならないことを意味します。それが果たして公平なのかどうかは接種をする方から考えれば複雑な思いにかられます。だったら自費でも接種しようかとも考えるのは当然のことですが、自費で接種すれば1万円程度かかるのも事実なのです。「健康はお金に換えられない」と人はよく言います。しかしインフルエンザ予防接種と違って高価なワクチンですのでやはり先立つものも必要になってきます。現在の高齢者はお金持ちが多いから本当に早く接種したい人は自腹を切ってでも接種するだろうと国は考えているのかもしれません。これと似た例では今年度4月以後70歳の誕生日を迎える患者さんの自己負担は2割に上がりました。これも制度の転換期の弊害でもあるわけです。ルールが変わるときは不公平感が出るのはいたしかたないということなのでしょうか。いずれにせよ公平感のある制度をこれからもしっかりと国は作ってほしいと思います。

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