コンビニ受診病

以前からこのような造語が公然と日本中で使用されています。もう広辞苑も認知して掲載しているのでしょうか?医療関係者からするとこの造語を聞くたびに世の中が豊かになり過ぎて感覚麻痺しているのではないかと思うのです。世の中の大病院が3時間待ちの3分診療とマスコミに叩かれて久しくなります。また人口30万人程度の地域には中核病院となる3次救急病院があります。これらの病院は今にも絶命するかもしれない救急患者さんを365日24時間体制で受け入れているわけで世の中にはなくてはならない存在です。また通常の診療所や病院は夜間になると軽症の患者さんでさえ自院では受け入れ体制が整わずに診察が困難なわけです。ですから我々も周南市の休日夜間診療所に出務して、微力ながら軽症な患者さんだけでも診察して地域医療に貢献しています。そのように現存する医療資源や体制で皆が可能な限りがんばってはいますが、コンビニ受診病という大病が社会に蔓延しているわけです。

そのコンビニ受診病とは昼間に仕事などの自己都合で病院受診できずに夜間に開いている救急病院を受診するわけです。健康保険を持ってあたかも昼間と同じような気持ちで受診します。全ての夜間の受診が悪いと言っているのではありません。夜間でも急にお腹が痛くなり生汗をかいて救急病院に家族が連れて来る場合や胸痛で動けなくなり救急車で来院という場合もあります。単純な風邪で昼間に都合がつかなかったからとコンビニに入る感覚で受診するような場合を指します。そのような患者さんを全て引き受けると3次救急病院は疲弊、パンクします。それをどこかのお偉方が医師は24時間営業当たり前のように言われると、さすがに限られた資源である医師は反発してしまいます。私も30歳頃までは島根県立中央病院で救急当直をしていました。勿論3次救急病院です。まずは自分が一人で診察して無理とわかればその専門の医師に来てもらうというシステムで、一晩のうちよく睡眠できても1-2時間で徹夜もザラでした。そして翌日は夕方まで通常の業務をこなしました。当時は医師なんてそんなものと若くもあり当然と思っていましたが、歳をとるにつれて疑問に感じ始めました。その過剰な時間外労働を労働基準監督署に申し立てれば法律違反になります。最近こそ労働基準に敏感になってきた世の中ですが、医療は治外法権なのでしょうか?そこで文句を言っても同じ医師の先輩である院長を困らせるだけで、それ以上に目の前の苦しんでいる患者さんが困るだけでしょう。その事実がわかっているからこそ黙って奮闘しているわけです。それでは民間企業のように値上げをすればといっても国が予算を握っていますし、毎年医師になる人数も決まっています。そして最後は貧乏くじのように残ったものが疲弊するのです。だからこそその大問題を解決するために今いろいろと模索されていますが、一度便利になった世の中は後戻りができません。先日埼玉の大学病院の救急医師が開業して365日夜間のみ診療所を開院したのをテレビで見て「かっこいいなあ」と思いましたが、「未熟な自分には到底できないなあ」とも思いました。

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