アンチエイジング

今巷ではアンチエイジングが流行っています。テレビのCMでもネットでもあふれんばかりの広告です。昨年の大晦日の紅白歌合戦で初めて大トリを務めた歌手の松田聖子さんのあのしなやかな肌、あれは間違いなくアンチエイジングの賜物と思います。昔学生時代に武道館に聖子ちゃんのコンサートに行きましたが、観客席から舞台までは100mもあろうかという遠くから見ましたので、もし今回の紅白が同じシチュエーションだったら、別に聖子ちゃんはアンチエイジングしなくとも十分に観客は欺けます。しかしハイビジョン技術を駆使して8Kというとてつもない高画質を開発しているNHKです。今回は通常のハイビジョン紅白でしたが、アップになれば皺やシミなどもクッキリと見えるはずです。そのため芸能人は美容整形からアンチエイジングまで体への資本投資の手を抜くことはできません。時代の流れか1億人総中流思考のためか一般の人々にもアンチエイジングの波が押し寄せてきています。医学の進歩も手伝って昔はシミ取りや少し鼻を高くすることが主体でしたが、現在は細胞を若返らせると謳っています。実際にiPS細胞など駆使すれば本当に細胞が若返ってしまうかもしれません。そうしたらある日突然昨日までのおばあさんがマダムに変身してしまう時代がくるかもしれません。

しかし、ちょっと待ったー!です。分子生物学的に原子が分子を形成してそれが細胞となり生命となります。そこには何億年もの時間の経過という進化が重なっています。その進化論を逆行するかのようなアンチエイジングには反対です。女性がささやかに少しシミを取る程度の世界ならよいと思いますが、現在の医学の進歩からするといずれ遺伝子レベルでの時間への逆行つまり人類創生の神への逆走にも見えるわけです。あたかも高齢ドライバーが高速インターを逆走して事故を起こすかの如く。今、海外では遺伝子検査で生まれてくる子供に格差がつく可能性もでてきています。勿論、世論や専門家は反対していますが、一方でそれを肯定しようとしている人々もいます。この流れが大きな潮流になったとき、本当に人間は神の領域を侵すことさえしてしまいかねません。その歯止めともいうべきルールを今からしっかりと作っておかなければなりません。現在、医療界でも細胞を若返らせるとか皺を取るなどの美容療法から細胞生物学までの領域のアンチエイジングがごちゃごちゃになっていて一般の人はその区別がつきかねる状況です。たとえば点滴の中に多くのビタミン剤をいれる自費診療があります。当院ではしていませんが、それくらいのアンチエイジング行為ならかわいいものでしょう。しかしそれがどんどん膨らんでいくとどこかで歯止めも必要ではないかと思うのです。

医療に携わって長くなりますが、高齢者はやはり皺があってその皺の数ほど脳みその皺も増えて肉体は衰えても人間的には賢くなる。そしてアルツハイマーなどの認知症で皺が変性していくのを防ぐアンチエイジングは大切ですが、昨日の皺くちゃのおばあさんがいきなり今日は肌がツヤツヤのマダム、あなたならどう思いますか?先日、患者さんからいただいたバラです。人間の美意識追求は花をも凌駕する勢いです。

バラ

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