大学の同級生に27年ぶりに会う~その2

そして再会の日まで毎日普段通りの私の時間が過ぎていきます。速くもなく遅くもなくほどほどに。1週間前というタイミングがちょうどほどよい時間間隔だったのでしょう。その間何を話そうかとあれこれ考えてはみましたが、会えば一気に27年前にタイムスリップします。考えても仕方がないのはわかっていますが、それでも気になります。ただひとつだけ聞きたかったこと、それは50歳もとうに過ぎて少し先が見え始めた今「当時、東京に残らずに長崎に戻ってよかった?」その一点のみです。その時の思いを四半世紀経った今こそ聞いてみたいと思って再会しました。「なぜそんなことを聞くのか?」と皆さん思うでしょう。隣の芝生が青いかどうかを確かめたかったのだと思います。

再会!やっぱり風貌は歳を食っても一瞬でお互いにわかります。あとは彼の4半世紀の活動内容の講演を聞いた後に事前にネットで調べておいたバーに直行です。金曜日なら田舎でも朝3時まで開いている店もあるのだと感心しながら、学生時代に戻ったつもりで話します。店での27年ぶりの乾杯!とても心地よい瞬間でした。あとは今に至る自分の歴史をお互いに紐解きながら語り合います。あっという間に夜は更けていきます。

翌朝。昨夜はあまり寝ていませんが、私は土曜で仕事です。彼は午前の新幹線で長崎へ帰りますが、帰る前に彼は当院を見学に来ました。朝のバタバタの時間帯を避けるために始業30分前に来てもらって慌ただしく案内をします。山口銘菓の生外郎を昨日彼に持たせています。二日酔いよりも睡眠不足の方が50歳を超えた体にはこたえますが、普段通り診察を始めます。仕事をしながら昨夜の一瞬で過ぎ去った過去の会話を必死に思い出そうとする今の自分がいます。その中には今の自分と記憶の彼方の過去の自分も入り交ってなんとなく妙な気分です。「何を話したっけ?昔の想い出話ばかりだっけ?そして家族の事や現在の仕事に対する不満も話したかなあ?」と必死に思い出そうとしますが昨夜はかなり飲んだので酔いもまわっていて昨夜の確かな記憶がありません。

でも一つだけ聞きたかったこと、それだけはしっかりと覚えています。隣の芝生の青い件です。やはり同じ境遇で、良かれ悪かれ医者の子供でした。親の背中を見ながら成長すると好きであれ嫌いであれ医者になる確率が高くなります。そこまではよくあるパターンですが、最近は少し風向きが変わってきて偏差値が高い学生が医学部を目指します。少し違和感があります。そして親が医師という仕事をこなせなくなると2世のおよそ半分くらいは後ろ髪をひかれる思いになります。「20年前の自分はどうだったのか?」と必死に思い起こそうとしますが鮮明な記憶はありません。しかし「宿命には逆らえず仕方ないさ」と心の奥底のどこかにあったのではないかと今頃になって思うのです。彼も同じでした。それを聞いたからといって過去や未来が変わることもないのですが、何となくつっかかった重荷がとれたような気がします。同じ境遇の人は周囲に多いのですが、それを敢えてマジに聞くようなことって、多分同じ青春を学生時代に過ごした旧友くらいでしょう。

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