マニキュア

娘が大学生になると耳たぶに穴を開けてピアスをしてマニキュアを塗り始めました。それはそれで女の子ですから致しかたありません。校則の範囲内で学業に支障をきたすことのないようにしてほしいと思います。しかし今まで見たこともない色の爪を見ると親としては何とも言えない気分になることも事実です。最近のネールアートなるものが流行っていますが、内科という仕事柄のため喘息の患者さんによく遭遇します。患者さんが爪にマニキュアを塗りたくっていることがよくあります。その患者さんがゼイゼイといって苦しそうにしている場合、真っ先にその患者さんに必ず体の動脈の酸素濃度を簡単に測定できるパルスオキシメーターという機器を爪にあてがって測定しますが測れないのです。以前でもマニキュアを塗った患者さんはいましたが、喘息のときにあまり測定できなかったことは記憶にありませんでした。しかし最近の流行で測定不可の患者さんに結構遭遇するようになってきたのです。ついつい心の中ではその趣味の悪い変な色のマニキュアを爪からこさぎとってしまおうかと思うこともよくあります。しかしこれも体の一部でピアスを気に入らないからといって耳から取り上げるのと同じ行為になるのかもしれず、そこまでする勇気は今の私にはありません。娘のマニキュアを眺めながらおしゃれもある意味ではいいことやら悪いことやらと思っています。別にマニキュアが悪いとまでは言いませんが、喘息の患者さんでも測定できるマニキュアを開発してほしいと思っているのは私だけでしょうか?医療機器会社と化粧品メーカーの共同開発が必要です。

なぜそこまでそのマニキュアにこだわるかと言いますと別にマニキュアを特定して否定しているのではありません。このパルスオキシメーターという代物は非常に簡単に人間の体内の動脈血液酸素濃度を測定できるからです。通常なら針を血管に刺して血液を抜いてから調べることが爪にあてるだけでほんの5秒程度でわかるのです。そして機器の価格も1万円程度の安さです。救急外来でも一般内科診療所でも胸部症状を訴える患者さんがよく来られますが、最初にできる簡単な検査なのです。聴診や心電図よりも素早く行える医療行為なのです。だからこそ一時の流行でその簡易検査ができないということが医師として「いかがなものか?」と思っているのです。その他に女性で病院に厚化粧をしてくる患者さん、これはやめてほしい。勿論女性ですから化粧をするなと言っているのではありません。しかし厚化粧をされるといくら苦しそうにしていても顔色がその厚化粧でかき消されてしまうこともよくあるのです。注意深く診察すればそんな厚化粧くらい関係ないのですが、まず診察をする時にみるのは顔色です。苦しそうなしぐさや動作も重要ですが、それ以上に現在の病状の第一印象を感じ取るには顔色は非常に重要なのです。最近のファッション事情に今回触れましたが、昔と比較して日常生活に余裕ができると自然と医療とファッションの境目も不鮮明になってきて、「こんなことしてもいいの?」ということが増えてきます。マニキュアとは少し次元が異なりますが注意していきたいものです。

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