勝手な思い込み

先日、仕事中に所用で業者さんに電話を掛けました。掛けども掛けども相手は通話中でつながりません。「向こうの受話器がちゃんと掛かってないに違いない」と誰しも思うはずです。当然のことで私も「全くもう!」と呆れていました。ここまではよくある話です。しかし何回も不通だとやはり何かおかしいと思い始めます。そこで自分のスマホに病院の電話から掛けてみます。すると胸ポケットのスマホは鳴らずに受話器から通話中の発信音が同じように聞こえてきます。みるみると自分の顔がゆがんでいくのが鏡を見なくてもわかります。すかさず今度はスマホから病院に電話を入れます。「ただいまこの電話は使われておりません」と言葉が返されるや否やすぐに大慌てになります。「病院の電話が不通で、こりゃ大変!」と大慌てでNTTに電話を掛けて「大至急、修理お願いします」ということでおよそ半日電話の繋がらない診療が続きます。診療しながら心の中は気が気ではありません。皆さんも似たような経験をお持ちでしょう。面白いもので自分の方に過ちがあってもほとんどの人は相手が間違っていると思い込みます。そして「お前が間違っている」と強気に出ますがだんだん雲行きが怪しくなり最後は「申し訳ない、私の方が間違っていました」と平謝りで一件落着です。そうすると相手も大抵は自分に非が無いことが証明されてニコッと笑って終わります。日常生活の場面ではよく遭遇する出来事です。

医療の場面でも同じような光景をちょくちょく見かけます。当院の専門領域で高血圧があります。医療機関で医師が測定する血圧を随時血圧と言います。健康診断でひっかかる血圧も随時血圧です。一方、健診で高血圧を指摘された患者さんが当院にいらして「どうしたものか?」と相談されると必ず「自宅で血圧を自分で測定してください」と宿題を出します。これを家庭血圧と言います。どちらが正しいかというと自宅で測定する家庭血圧の方が個人の真の血圧に近いということが科学的に証明されています。しかし患者さんはその事実を知らない人の方が多いのです。そして2週間程度測定してこられた患者さんの測定値がかなり高くてその際に「自宅の血圧計が壊れている」と言われる方が結構いらっしゃいます。そこですかさず「壊れているのは機械ではなくてあなたの体です!」と説明するのですが、そこですぐに「そうですか!」と反応する患者さんは半分で残りの方はまだ納得できないようです。そこでダメ押しで「車でも洗濯機でもテレビでも60年も長持ちするものはありますか?家電製品なら壊れたらスクラップです。人間はスクラップにできませんが似たようなものです」と言って納得させます。皆さん、考えてみてください。人間の体ほどこの世の中で頑丈に80年ももつものなんて他にありますか?自分の体に感謝しなければなりません。

とかくこの世では自分が悪いことをしても他人やモノのせいにします。国対国も同じく非難の嵐です。私も同じで今回も電話の故障の件で相手側が悪いと勝手に思い込んでまた失敗です。他者が悪いと思う前に冷静に自分を見つめ直さなければなりません。

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