ゆらぎと事業計画

心臓の脈拍は揺らいでいます。と言っても何のことやらさっぱりでしょう。これは心拍変動といって心臓が鼓動する1回1回の間隔が微妙にずれるのです。そのずれの事を揺らぎと言います。家庭血圧計などで心拍数(脈拍)が表示されます。例えば心拍数60回/分と表示される場合1分間に60回心臓が鼓動していますよという意味なのですが、1分まるまる測定しているわけではありません。その時の心拍数がもし1分続いたら60回になるよという予想なのです。だから少し前の心拍数は58回で次は62回かもしれません。総じて押し並べて見ると平均60回/分なのです。人間は生物ですから時計のように精密機械ではありません。メトロノームのように正確ではありません。時計やメトロノームが80年間も壊れずに正確に動き続けることができるでしょうか?多分不可能です。しかし人間の心臓は休まずに80年間動き続けるのです。そのためには微妙に心臓の鼓動の間隔にばらつきという揺らぎが生じて、それが長い目でみれば故障を防いでいるのです。最近ファジーという言葉で機械のコントロールを少し曖昧にわざとすることがよくあります。これも生物学的には正しい理論で正確に時を刻むように作動するよりも人間にとっては心地よく感じてしまうのです。

先日あるカンファレンスで事業計画についての検討会がありました。銀行から少しでも有利な融資を引き出すためには綿密な事業計画が必要になります。それはお金が絡むことですから致し方ありません。しかしまだ土地も建物も決まってない個人事業主が事細かな計画を立てたってうまくいくわけがありません。詳細な準備は必要ですが、ことお金に関しては少しくらいファジーな部分があってしかりだと思うのです。事業を始めると急に工面しなければならないお金が必要になることが多々あります。ですからある程度ファジーで揺らぎのある事業計画を立てるべきだと感じました。たまたま他の方の事業計画を見せて頂いたのですが、あまりにも完璧な計画でした。もし予想通りにお客さんが来なければ?とか事業主が急に病気をして仕事ができなかったら?なども長い人生ではよくあるとまでは言いませんが、考慮しておかなければいけないことです。自分が結構な計画魔の性格ですのできっちりとした事業計画を見ると気持ちよく爽快な気分になるのは事実ですが、今回の計画を見るとあまりにも完璧すぎて完璧を求めることが好きな私でさえももう少しファジーで揺らぎがないと長い人生うまく乗り切れないと思った次第です。勿論、計画を立てられた方を非難しているのではありません。昔の自分なら同じように突き進んでいたに違いないからです。地元の診療所に帰ってきて早20年近くが過ぎようとしていますが、その間いろいろな事態が起こりました。その結果自分が思い描いた事業計画なんてなんと青かったと思う今日この頃です。老婆心ながらそのように思っています。その事業計画を見せていただいた時にふと20年前の何も先が見えないけれどもやる気だけはみなぎっていた当時がとても懐かしく思い出されました。

カテゴリー: 日常のこと パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です