子供のおやつと塩の話

昨年秋に学校医の仕事の一環で7年に1回の持ち回りによる小学校での教育講演をしてきました。それが今回のタイトルです。塩分の摂り過ぎは生活習慣病の中でも特に高血圧に影響します。脂肪や蛋白質などは成人になれば摂り過ぎ注意となりますが、子供の場合は成長に必要で不足するとよくありません。それは素人でもわかると思いますが、子供の塩分摂取量についてはあまり周知されていないと以前から思っていましたので、今回の話題提供です。

生物の進化の過程では最初は海から生物が生まれます。海ですので塩と水はふんだんにあります。しかし生物が陸上へ上がっていくと体の器官は不足する塩と水を貯め込むように発達していきます。また食べ物の中には野菜など一部を除いて少量の塩分はほとんど含まれていますので食べ物がある限り塩不足になることはありません。実際にアフリカの一部の民族は1日に23gとほとんど塩を摂取しなくてもちゃんと生きています。更にその民族には高血圧があまりいません。つまり生きていく上での最低限の塩さえ摂取できれば残りは体にとって余分な塩となり水を一緒に貯め込むために高血圧という現代病になっていくのです。ですから子供でも大人でも塩分は少なければ少ないほど将来高血圧は発症しにくいのです。一方で狩猟民族は飢餓との戦いに勝つために体は蛋白質や脂肪を貯めこむ能力を持つようになりますが、やがて農耕民族になるにつれて食料の供給が安定的となりそれほど体に貯め込む必要がなくなります。それにも関わらずに食べ過ぎるのが現代の生活習慣病で脂質異常や糖尿病になるのです。ですから塩とそれ以外の栄養素は少し分けて考える必要があります。三つ子の魂百までという諺がありますが、正に塩分摂取の習慣は親が子供に教えるものです。なぜなら親の味付けで子供の味覚がある程度確立されるからです。つまり辛い物が好きな親に育てられた子供はやはり辛い物を普通に食べます。煙草を吸う親を見て育った子供に喫煙者が多いのと同じです。食育という言葉が流行っていますが、塩分摂取も重要です。塩分摂取は1日に6g程度に抑えればよいのですが、味噌や醤油などの和食中心の食事では塩分過多になりやすいのです。実際の6gの塩分量はほんの小さじ1杯しかありません。そのような塩分含有パンフレットを一緒に参加者に配布してどうやって塩分を減らすかを講義しました。同時にアンケートを事前にとって小学生のおやつはスナック菓子などが多く予想以上に塩分が多く含まれていることもわかり注意喚起を促しました。

最後に小学校の過去の保健衛生の資料で30年以上前の昭和60年に同じようなアンケートを取り当時のおやつのベスト3が出ていました。3位はみかん、2位は牛乳でした。1位はどうしてもアンケート結果がみつからなかったようです。皆さん、どんな食べ物と思われますか?私の推測ではみかん、牛乳とくれば1位はバナナだと思っています。正解かどうかは不明ですが、少なくともスナック菓子ではないようで隔世の感を感じます。

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