「君の1日の塩の摂取量はいくら?」その2

それでは前回の長い前置きの後の講演についてお話しましょう。当日は冬晴れの中、中学校体育館に小学の高学年生と中学生、それに先生方やご父兄で大体70-80人といったところでしょうか。自分の講演はいつもの如くこのブログに書いているような調子です。今回の題目が塩分についてですので、患者さんに食事指導で説明するようなしゃべり方で会は始まります。

本日の題名「君の1日の塩の摂取量はいくら?」について、第一声として「皆さんは三つ子の魂百までという諺を知っていますか?」と質問します。小学生はキョトンとしています。結局のところ人間は遺伝で病気が発生する場合もありますが、実際は環境要因がとても大きいのです。つまり親がタバコを吸えば将来子供も喫煙率が高くなるように、親が塩辛いものが好きなら子供も親の食生活を引き継ぎ塩分の多いものを好むようになるということです。あとで恩師の校長先生とも雑談したのですが、実母の作った味噌汁と奥さんの味噌汁を比較するとやはり奥さんの味噌汁の方が薄く感じて「あともう少し味噌が多めに入っていればなあ」と思うこともあるとのこと。それで三つ子の魂百までの意味に納得したとのこと。また学校給食の味付けが薄く感じると思っている生徒がいれば、それこそ家庭での味付けが濃いという裏返しだとお話しました。

次に1日塩分摂取は7g程度が理想だが、現実は10g超えている場合も多いことを説明しました。朝食で味噌汁をのめば1g、醤油をかけた漬物を食べて、塩鮭でも食べようものなら軽く5gオーバーといったところ。昼食でラーメンを汁まで飲み干したら、軽く1日量の8g程度までいってしまいます。そして全てを足し算してみてください。多分、10g以下にすることも大変なことがわかるはずと説明していきます。また間食のアンケートで多かったアイスにも塩が入っていることも生徒には新鮮だったようです。なぜ?と養護の先生が生徒に話したときに「お婆ちゃんがあんこを入れておはぎを作るときに少し塩を入れて味をひきたたせるのと一緒」と答えたそうです。これが実生活から学ぶ勉強でしょう。また菓子袋にNa○○mgと書かれている場合、塩分量に換算する場合は×2.5すると出ます。この計算の詳細は省略しますが、原子量、分子量から計算するとそのようになるのです。

などなどいろいろお話ししていくうちに時間が過ぎていきます。最後に育ちざかりの子供には「難しいことは考えずにバランスよく腹八分でもう少し食べたいなと思うところで御馳走様をするように」と説明しました。昔の人はいいことを言ったものです。ご父兄にはその塩分表の挿絵(事前にプリントしておいた食道楽カルテのコピー)を見ながら毎日の食事に含まれる塩分に注意してくださいという旨で締めくくりました。いつもの食事指導の延長でしたので自分でもリハーサルなしのぶっつけ本番でもスムーズにできました。終わって帰り際に小学校の校長先生が一言。「今、緊急メールで付近に熊が出たとのこと。児童父兄に注意喚起します」と言われていました。やっぱりのどかで素晴らしい学校です。

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