昔も今も変わらぬ運動会

先日、小学校の運動会がありました。あいにく前日は雨模様で沖縄周辺に台風がうろうろして局地的に大雨という予報がでていましたので、当日は無理かなあと思っていました。深夜、激しい雨音に目が覚めてしまいました。多分午前2時頃だったと思います。自分が運動会に出場するわけでもないのにやはり気になるのでしょうか?昔、遠足の夜眠れず何回も起きたあの時と同じ気持ちです。朝6時の花火とともに数珠のように行列と化した集団が弾けるように一斉にダッシュして散らばっていきます。子供たちの競技を観戦するベストな場所を確保するためです。さながら運動会の前座がもう始まったの?と勘違いするほどの白熱した親たちの陣取り合戦です。その毎年繰り返される光景を見る頃にはすでに雨もあがり、運動会の1日が始まりました。

いつの頃か運動会は土曜日に変わりました。昔は日曜日だったのですが。当院は土曜の午前中は診療があるため午前の部は見ることができません。昔は10月10日の体育の日の前後に小学校の運動会が開催されたように記憶しています。東京オリンピックを記念して体育の日が制定されたため、運動会も同じ頃に開催するものだと子供ながらに思っていました。現在のお彼岸前後とかなり早い時期に前倒しされた運動会には少し違和感があります。我々の時代の運動会の朝は少しひんやりとして赤とんぼが飛んでいる季節で、季語でいえば中秋です。今の運動会は残暑が残る初秋とでもいいましょうか。今昔物語も話せばきりがありませんが、昔は秋を大運動会といって日曜日に開催して家族に観戦してもらい、初夏の5月には小運動会といって学校内の生徒のみで開催されたことも記憶に残っています。運動会も時代とともに変化しています。

しかし運動会の内容を見ますと過去も現在も全く変わっていません。徒競走、踊り、騎馬戦、組体操、大玉転がし、綱引きそして応援合戦や最後のトリの紅白リレーなど何十年と受け継がれてきています。変わるのはその時代時代の主人公たちだけです。そしてその主人公たちの汗を流している笑顔や泥だらけの体操服はとても光輝いています。そのような貴重で大切な一瞬を見逃さずに、未来まで自分の記憶の引き出しにしまっておきたくて、必死で目に焼き付けようとします。勿論、写真も撮影しますが、その時のリアルな瞬間は目と耳による五感で脳に焼き付けなければなりません。

毎年の花形の組体操、今年の正式名はスタンツ2011ですが、去年までのピラミッドよりも更に天高くそびえていました。その完成した美しい姿に拍手を送ったのは私だけではありません。そのピラミッドを見てください。前途ある子供たちが未来に向けて羽ばたいていくように見えます。その生き生きとした姿を見るにつけて彼らの将来も必ずや光輝いていくであろうと信じています。


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全国高校生クイズ選手権を見て

先日、この時期恒例の全国高校生クイズ選手権が某テレビでありました。毎年、全国から名だたる高校の生徒さんが出場されます。勿論、有名校が多いのですが、地方からは公立校の生徒さんもたくさん出場されています。そのような激戦の中、勝ち残った高校生の戦いぶりをじっくりと拝見しました。勝って笑い、負けて泣くという風景は高校野球で甲子園に出場する18歳の高校生と変わりありません。あの頃は誰も皆あのような純粋な気持ちを持ち合わせていたのに、いつ頃から過去に置き忘れてきたのでしょう。

高校生が新しい知識を吸収する場合、喩えれば脳という柔らかいスポンジが知識という水を吸収していくような感覚でしょうか。あなた自身の当時の試験直前を回想してみてください。ここ一番本気で覚えなければならないと切羽詰まったとき、現在の自分と過去の自分を比較すれば、過去の自分のスポンジの方がはるかに簡単に水を吸い込んでいったはずです。年を重ねて現在の自分のスポンジが硬化してくると、多分血管の動脈硬化とたいして変わらないと思いますが、何度も覚えようと努力してもなかなか覚えることができません。意地でも何かと理屈をつけて覚えようとして、あたかもきれいな水に味付けしないとこの古びたスポンジには吸収することができません。よく言えば物事を注意深く考えるようになったとか理論的思考回路になったとも言えるでしょう。しかし悪く言えば石頭になり柔軟な発想や考え方ができなくなったとも言えるのではないでしょうか?

今回高校生クイズ選手権を見ながらあの頃の自分がとても懐かしくもあり、決してあの当時の真っ白な皺のない何でも吸収できるスポンジを取り戻せない時間とのギャップが悔しくもあります。先日の同窓会にしてもあの当時の記憶はすぐに蘇りますが、当時のCPUとメモリーは取り戻せそうにはありません。しかしその年を重ねた分だけスポンジに経験という何ものにも代え難い皺が刻み込まれたのも事実です。これからも白いスポンジを大切にしながら皺を1本1本増やしていきたいものです。

 

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血圧の季節変動

前回は血圧測定についてお話しましたが、今回は季節変動についてお話しましょう。一般的に夏は汗をかき体の水分が減るために血液量が減り、また暑さのために血管も拡がり血管の抵抗が下がるため、血液の圧力すなわち血圧は低下します。

それでは冬はどうでしょうか?冬の寒い朝を思い浮かべてください。体も縮こまるような寒い朝です。そのときには血管も縮こまるつまり血管の抵抗も上がり、夏のように汗もあまりかきませんので体の水分も減らないために血圧は高くなります。つまり冬の方が夏よりも血圧が高くなります。また朝と夜を比べてみましょう。冷え込んだ朝の方が、夜にお風呂に入ったりお酒をのんだりして温まった体より血圧が高いのは直感的にもおわかりいただけると思います。

血圧による病気の発症は夏よりも冬に多く、また夜より朝(午前中)に多いことが統計的にわかっています。また健診のときに高血圧を指摘されても、自宅の血圧は正常という場合もよくあります。いわゆる白衣高血圧といいますが、それはまたの機会に説明させていただきます。つまり血圧は測定する季節、時間帯でかなり変動するということです。ですから一定の時間を決めて測定することは大切なのですが、測定する季節や時間帯を間違えると本当は高血圧で治療が必要なのに見逃されていることもあるわけです。また怒ったり泣いたり緊張したりすれば血圧は上がります。頭に血が上るともよく言います。その時はやはりカッカしているので当然血圧も高いでしょう。

当院では季節性や時間帯も考慮して毎日、起床時と夜寝る前に測定をお願いしています。原則は1年を通してですが、特に冬場の測定は重要視しています。いいところばかりを知っていても不十分で、悪い部分を知らなければ改善もできないし、倒れてからでは遅いですものね。冬場の早朝によく救急車のサイレンを耳にします。消防隊の方に直接聞いたことはありませんが、職業柄そのサイレンは交通事故か高血圧による脳卒中や心臓疾患が多いのではないかと思っております。

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なんとも優雅なサギソウ

サギソウ毎年この時期になると当院の患者さまがサギソウを持って来られます。いつも夏休みが終わる直前で外はまだ残暑の厳しい8月下旬です。そろそろクマゼミの鳴き声からツクツクボウシの鳴き声が賑やかになる頃です。皆さんはサギソウをご存じですか?シラサギが翼を広げたように咲くサギソウを一度見ますとその優雅さは忘れられません。植物なので飛ぶはずもないのに、白い翼を広げて舞うように今にも天へと飛び立ちそうな姿をかなでています。

去年、その患者様とサギソウの歴史が新聞に掲載されていまいした。およそ30年前に新聞で「サギソウの球根を分けます」という記事を読み、小さな球根を5個ほど分けてもらい、本で栽培法を勉強しながら大事に育てて現在に至ったそうです。やはり植物でも動物でも何でもそうですが、丹精を込めて大切に育てなければいいものはできないと思います。サギソウは夏の季語にも登場しますが、環境省の準絶滅危惧種に指定されているそうです。

その新聞記事にも書かれていましたが、サギソウを見ていると「癒される」という言葉がぴったりとあてはまります。

サギソウ毎年この時期にサギソウを見ますと夏が終わりを告げ秋の訪れを感じ始めます。「自分もまた1年の年輪を重ねたなあ」と感じながらしばしの風情を楽しんでいます。これからもお元気でサギソウを育てていただき、当院の毎年の風物詩にしていただきたいと思っています。まだまだ残暑厳しい今日この頃ですが、晩夏にふさわしいサギソウの写真を皆様に堪能していただけましたら幸いです。

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家庭血圧計で血圧測定をする意味

人間の血圧は心臓が1回打つごとに1回の血圧が発生します。それはエンジンである心臓から血液が出る勢いとゴムホースである血管の硬さにより血液の圧力つまり血圧が決まります。ということはエンジンが弱くてもホースが硬ければ血圧が上がります。これが高齢者の高血圧です。ホースが軟らかくてもエンジンがフル回転すれば血圧が上がります。例えれば若い方が運動したときでしょうか。また「人生、楽ありゃ苦もあるさ」すなわち血圧も「山あれば谷あり」つまり血圧が高ければ体が反応して下げようとする調整機構が働きますが、それが年とともに弱ってしまうと高血圧になります。

本などで血圧の測定法を見ると、いろいろなやり方が書いてあり、どれが本当か迷うことも多いかと思います。ですから当院では、血圧の数字は全て本当(数字はうそをつかない)なので、自分の都合のいいような数字だけを並べず、全てをそのままに記入するように指導しています。よく患者さんから「この血圧測定器が壊れているのでは?」と質問を受けますが、「電池切れなどを除けばほとんど壊れていることはありません。壊れかけているのはご自身の体の方で、体の危険信号を血圧で訴えているのです」と患者さんに答えるようにしています。

ですから朝起床時と夜寝る前に1回もしくは2回測定した数字をそのまま記入してかかりつけの医師に見せればよいのです。そうすればプロである医師が患者さんの状態を把握して適切なアドバイスをするはずです。そして塩分制限を含めた食事療法のみでの治療が困難ならば、薬をのむという選択肢も出てきます。高齢者の高血圧の場合は最初に書いたとおり、ゴムホースが朽ちて硬くなっていますので、最終的には薬をのむという選択肢は避けて通れません。年をとるにつれて血管が若返るということはありえませんので、いかにして加齢という老化の進行を遅くするかということになります。治療を開始する前に患者さん自身の体の状態をよく知っていただければ、なぜ薬をのまなければならないかということを理解していただけると思います。

 

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